Tsuba: Sig. Amano Yoshiyuki [Kin-in Zo]
Fuchigashira: Sig. Yujo Osui ni oite Kei Amano Yoshiyuki kore wo tsukuru
Meiji 4 Kanoto Hitsuji no toshi Shogatsubi
保存刀装鑑定書
価格 八十五万円(消費税込)天野義随の様々な魚が高彫表現された鐔と縁頭を要として、海老図金無垢目貫と笹蟹図小柄を採り合わせて瀟洒で美しく仕立てた脇差拵。収められているツナギは南北朝頃の一尺一寸強の平造小脇差だが、鞘は長く一尺三寸五分の脇差が収められ得るたっぷりとした造り込み。黒蝋色塗の鞘は、腰元のみ二分間隔の刻みが設けられ、それ以下は印籠刻として激しく寄せ来る立波文が金粉蒔絵されて金具との調和美が図られている。鐔は上質の赤銅地で縦長の木瓜形とし、縦に綺麗に揃った細かな魚子地の上に極肉高の立体的描写になる魚が象嵌されている。色金は朧銀、金、銀、素銅で多彩。縁頭と鐺も同じ義随の一作になる赤銅魚子地で、際端がくっきりと立ち上がる高彫に金、銀、素銅、朧銀の色絵とし、丁寧な鏨が加えられている。鯛の目玉にのみ緑色に滲む青貝が象嵌されて鮮やかな光を放つ。他の魚の目玉も、深く彫り込んだ部分に金の色絵を施したり、艶やかに丸みを持たせるなど処理が多彩で、生命感に溢れる作となっている。白出鮫に据えられた伊勢海老図の目貫は、色合い鮮やかな金無垢地容彫。笹に蟹図の小柄(注)は、赤銅石目地に高彫、明るい金色絵とされて、これも立体的である。
注…小柄は替え用に二本用意されている。他の一本は、四分一地高彫の荒波図。