鯱図鐔
銘 長州萩住友富作
大振りながら、角形の各辺を絞って糸巻風に引き締まった造り込みとした鐔。
河治友富は弥平次と称し、毛利家の藩工。宝暦二年に家督を継承している。
この鐔は、黒々とした質の良い鉄地を磨地にし、個性的な意匠からなる量感のある鯱を渋い色合いの山銅で高彫象嵌した作。
敢えて華やかな金銀を用いずに造形の妙味を訴えている。
裏面は嵐の海原。この波にのみ金銀の線象嵌を施し、降りしきる雨は簡潔な筋彫。
左右に雲を陰に透して印象を強め、耳を鋭く打ち返している。