月見観瀑図大小鐔
銘 菊川南甫[印]
菊川南甫は久英と銘した菊川宗吉の門人。浮世絵師菊川英山とも有縁の工で、鏨使いに個性のある奇抜な彫刻で知られる遅塚久則にも学んでいる。
ここの鐔は、詩人で酒を共として各地の名勝を訪ね歩いた李白を題に得、雄大な風景を山水画として彫り描いた作。大は「月下独酌」と題されているあまりにも有名な詩が題材、小は装剣小道具に間々採られている廬山の瀑布。いずれも磨地仕上げの赤銅地で澄みきった深山幽谷の空気感を鮮明にしている。
金象嵌による木々の表情に、遅塚久則の影響が窺える。