金唐革塗鞘合口短刀拵入
拵全長 一尺九分
柄長 七寸九分
平成九年兵庫県登録
保存刀剣鑑定書
長舩祐定は、数多くの優工を擁して名立たる武将たちの注文に応えた、戦国期の備前国最大の技術集団である。殊に棟梁与三左衛門尉祐定が差配した、室町後期永正頃の精良な鍛えからなる地鉄に焼高い互の目乱刃の冴えた作は、優れた刃味と操作性をも備え、戦陣に臨んだ武将たちの厚い支持を得たのである。 わずかに内反りが付いたこの短刀は、戦国武将が敵と組み合った際に、鎧の間隙を刺突するべく腰間に備えた最終の武器。元来の重ねが厚く、長めに仕立てられた茎は掌中に収まり良く、重宝されたものであろうふくら枯れごころとなる。地鉄は板目に杢を交えて肌目が強く起ち、地沸が厚く付いて湯走り、飛焼となったその合間に地景が太く入る。互の目に片落ち風の刃を交えた焼刃は銀砂のような沸で刃縁の光が強く輝き、沸匂で明るい刃中にはほつれを伴う金線、沸筋、砂流しが激しく掛かり、長い棟焼は地沸と湯走りに連動して与三左衛門尉祐定得意の皆焼の様相を鮮明にする。保存の優れた茎に細鑚で丁寧に刻された備前國住銘も与三左衛門尉祐定の銘に似ている。小品ながら戦国武将の覇気を体現したような見応えのある一口である。 江戸時代には護身用として懐に備えたものであろう、金唐革風の鮮やかな変り塗の上品な拵に収められている。