飛燕図鐔
銘 天台山麓園部芳英(花押)
精巧緻密な高彫表現を得意とした園部芳英(よしひで)。
春の暖かい風を切り裂いて飛翔する燕を描き、どこまでも青く清らかに澄んだ空気を表現した鐔。
涼やかに流れる小川と、そのほとりに咲く蒲公英、土筆、遠く広がって天に溶け込む大地も、総てが空気のありようを演出している。
主題の背後にあって重要な存在は、細やかに揃った赤銅の魚子地に他ならない。陽の光を大地に届けてくれるのが空気。
円状に打ち施した魚子地も燕や草原に生命感を与えている。
赤銅の黒、銀の白、目玉の金、頬の素銅とわずかの色金ながら、写実的高彫描写された燕は細部まで精密。
小川の流れは高彫で、切羽台のみ銀の平象嵌。
注…天台山とは寒山拾得で知られる国清寺のある霊山。我が国では比叡山のことで、江戸では寛永寺を意味している。