脇差 銘 越後幕下士大村加ト尉作之
変り塗鞘脇差拵入Kawari nuri saya, wakizashi koshirae
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駿河国有度郡上川原の庄屋森助右衛門の次男として生まれた大村加卜は、外科を修めて大森治部左衛門尉安秀と名乗り、越後高田藩松平光長の侍医となって信頼を得た(注@)。同家蔵の名物童子切安綱(注A)を直接鑑賞し、その雄大な姿と深遠なる地刃に深く胸を打たれ、自らも作刀している。正保三年二月精鍛の刀には「真十五枚甲伏有不折不巻之徳 欲聞九百年中之物語」と銘(注B)があり、古伯耆安綱の生きた遥か平安時代への深い想いを窺わせている。 注@…天和元年御家騒動で光長は伊予松山へ流罪となり(越後騒動)、加卜は水戸光圀に仕えた。故事を愛する心と豊かな経験は光圀を楽しませたことであろう。加卜の生涯は関山豊正先生『水戸の刀匠』、福永酔剣先生『日本刀大百科事典』参照。 |
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