皆山應起は直市と称し、江戸時代後期の京を代表する大月派の光芳と光興に学び、師を凌駕する細やかな彫口からなる作品を遺している。この鐔は、いくつもの実を付けた茄子を正確な図採りと精巧で精密な彫刻で写実表現した、應起の優れた技量が良くわかる作。漆黒の赤銅魚子地に肉高くくっきりと立つように瑞々しい茄子の枝を彫り出し、枝葉は色の濃い朧銀で花は金色絵、実は艶やかな光沢をもつ赤銅で表し、葉の虫食いはもちろん蔕の棘まで見事に再現している。 保存刀装具鑑定書 八十五万円(消費税込)
注…「茄子の花は千に一つの無駄もない」と言われるように必ず実が成ることから御家安泰を暗示。また、ポリフェノールの効用と塩分を代謝させる効果も見出されているように、古くから薬種のように身体に良い食物とされていた。