蓬莱仙境図小柄
銘 後藤廉乗(花押)
徳川家の御用を勤めた後藤宗家十代廉乗は同八代即乗の子で寛永五年の生まれ。承応元年に家督を相続し、幕命により江戸神田永富町に屋敷を拝領して京と江戸とを往還した。
廉乗自身銘になるこの小柄は、漆黒の赤銅地を魚子地に仕上げ、ふっくらとした高彫で海辺の山々を彫り出し、松樹を近景に山を越えて帰巣する鶴を描き添えた作。四季を明確にする我が国には独特の自然観がある。その詩情豊かな景色を山水風に表現しており、的確な画面構成が美しい。
見えない裏板は金地で豪華。