黒漆塗とした鞘の表裏に、銀の厚板で蛇籠の置かれた川を遡上する魚を文様として象嵌した、洒落た風情の拵。魚、波、蛇籠には毛彫を加えている。縁頭は銀地に釣竿の置かれた川辺の風景を毛彫で彫り表した作。目貫も銀地容彫の蛤図。富岳を遠く眺める海辺の風景図銀魚子地高彫表現からなる小柄を添えている。鐔は銀地唐草文。笄は猪目を透かした銀地無文。渋く古色が付いた銀と黒漆の対比が魅力の拵となっている。高位の武家の普段差しとされたものであろう、小柄櫃に「備前國長光」と金粉書きがあり、ツナギの造り込みも古雅な趣を湛えている。