昭和二十六年東京都登録(令和二年再交付)
特別保存刀剣鑑定書 (長舩・応永頃)
保存刀装鑑定書
是光は備前国の刀工で、『光山押形』に應永廿四年紀の脇差のある室町初期の是光と、長享二年十二月日紀の脇差(『銀座情報』百四十八号)を製作した室町中後期の是光がいる。前者は盛光、康光など、後者は勝光、宗光などの時代に活躍しており、いずれも遺作は尠ないながら上手の工である。
表題の平造脇差は応永是光の一振。身幅広く重ね厚く両区深く付き、身幅に比して寸法が延び、棒樋が丸止めとされて姿垢抜け、まさに応永備前の典型的体配。応永杢の顕著な板目鍛えからなる地鉄は、小粒の地沸が厚く付いて地肌潤い、棒映りが鮮明に立って鉄色も晴れやか。直刃調の刃文は小互の目、小丁子、浅い湾れを交え、小沸付いて匂口締まりごころに明るく、刃境に小形の金線が躍動して砂流し掛かり、足、葉が入り、匂立ち込めて刃中も昂然と輝く。帽子は焼を充分に残し、僅かに掃き掛けて大丸ごころに返る。筋違鑢が掛けられた栗尻の深い茎は保存が優れ、二字銘が神妙に刻されている。覇気に満ち、しかも洗練味が漂い、盛光、康光に比しても遜色のない見事な仕上がりとなっている。
桐紋金具で装われた、銀沃懸地塗鞘の極上の合口拵が付され、上級武士の装いを今に伝える得難い逸品である。