四鐶透文字散図鐔
銘 熊本住良弘 安永六年十一月日
良弘は西垣を冠する金工の一人で、本作の他、明和四年、安永九年の年紀作を遺しており、西垣門下でも高位の立場にあった工と思われる。作風は、林又七を思わせる鍛え強い鉄地からなる安定感のある造り込みに金布目象嵌を配するを常としている。
この鐔は特別の注文であろうか、林一門にままみられる蕨手を組み合わせて鐶を構成した地面に草の葉と「鐔ハ拳の備にして鉄能キ為ニ本好シ…」の文字を耳に散し配し、個性的な文様としている。鉄色黒々として渋い光沢に包まれており、暖か味のある濃厚な色合いの金が映えている。