秋草図は、四季の明確な我が国の自然が創り出す美観を代表するもので、古くから器物の装飾に採られ、また装剣具や鎧兜の装いとしても好まれている。古金工や古美濃に分類される秋草図金具は、江戸時代に至ってより洗練味のある文様へと進化し、精密な彫刻技術を背景に、この拵に用いられている金具のように美観が極められた。殊に江戸時代には黒と金の調和が図られた作品が好まれ、黒漆塗鞘と赤銅魚子地の黒に、金色絵が映える構成こそお洒落であり、近代から現代へと美意識が伝えられている。この脇差拵は、鐔が魚子地の耳にのみ高彫金色絵で菊、撫子、萩を連続させた素敵な意匠。小柄は夏から秋へと時の移り変わる様子を閉じ込めたような鮮やかな作風で、芒花の細い葉と露が繊細。古美濃風に深彫を取り入れた縁頭、栗形、瓦金も秋草が押し合うような濃密な構成で、草花に蟹図目貫を黒糸で堅く巻き込んでいる。