脇差
銘 助政造(直江)

Wakizashi
SUKEMASA tsukuru (Naoe)


常陸国 文化六年,四十五歳頃 約二百十年前

刃長 一尺一寸二分強
反り 一分
元幅 九分二厘半
先幅 七分四厘
棟重ね 一分一厘
鎬重ね 二分
金色絵二重ハバキ 白鞘入


平成元年大阪府登録
特別保存刀剣鑑定書

Hitachi province
around Bunka 6 (AD1809, late Edo period) / about 210 years ago

Hacho (Edge length) 33.9㎝
Sori (Curvature) approx. 0.3㎝
Motohaba (Width at Ha-machi) approx. 2.8㎝
Sakihaba(Width at Kissaki) approx.2.24㎝
Kasane (Thickness) approx.0.61㎝
Gold iroe double Habaki / Shirasaya


Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK

 直江助政は、越後の上杉景勝に仕えた戦国武将直江兼続の末流と伝え、茨城郡常盤村神崎に生まれる。長じて鍛冶となり大坂の尾崎助隆に作刀を学び、さらに江戸では水心子正秀の門を叩き、両師共に突き詰めた大坂新刀を範とする清新な鍛えと沸匂深い焼き入れ技術を吸収習得、帰郷後の文化六年には水戸藩工として抱えられている。師の華やかな作風に沸の妙趣を盛り込んだ、水戸新々刀中の異色の巧手である。
 この脇差は、戦国時代の余香の漂う江戸時代最初期の慶長頃に特徴的な、長刀の添え差しを写した抜刀に適した小振りな造り込み(注)。控えめの寸法ながら鋒が延びて姿形整い、鎬が張って棟を削いだ刺突に適した構造。地鉄鍛えは細密なる小板目肌で、清らかな地沸が一面に敷かれて地肌瑞々しく潤う。刃文は粒の細やかに揃った小沸と明るい匂の調合になる、刃形の定まらない自然体の湾れ刃。清浄な匂が密集した刃中は明るく冴え冴えとして朝日に照らし出された雲海の如し。刃境より溢れた沸は地中を侵して湯走りとなり、鎬地にまで淡く広がる。焼の深い帽子も健全で、ここも沸強く深く先小丸に返り、棟の所々を淡く焼き施して堅牢さを高めている。総体の鉄色は頗る澄明で、井上真改を秘かに狙った助政の深意が酌まれる一口。保存状態も優れ、錆の浅い茎には刻銘が鮮明に遺されている。

  注…慶長頃の繁慶や南紀重國に多い小脇差の造り込み。


脇差 銘 助政造(直江)脇差 銘 助政造(直江)脇差 銘 助政造(直江) 白鞘

 差表切先脇差 銘 助政造(直江) 差表ハバキ上

脇差 銘 助政造(直江) 差裏切先脇差 銘 助政造(直江) 差裏ハバキ上

脇差 銘 助政造(直江) ハバキ

助政 押形