善助友恒は江戸中期の長州鐔工を代表する名人(注)で毛利家の抱工。植物図、山水図、龍神図などを正確で精密に彫刻描写する長州鐔工の中でも、作風や図柄に広がりを見せたのがこの友恒。天上からの俯瞰という構図のこの鐔は、鉄味が細やかで彫口も精巧。苫舟や干網など海辺の山水図のような景色ながら、槌で大地を穿つ人物、蓮花文が飛び交い龍の這う海辺などは異界を想わせる、不思議な世界観が示された作となっている。昭和十三年発行の小倉惣右衛門著『金工名作集』に所載されている。
注…第四十七回重要刀装具指定、三番叟図鐔(銀座長州屋旧蔵)等がある。