金梨子地塗家紋蒔絵鞘小さ刀拵
脇差 銘 兼(以下切 兼永)

Kin nashi-ji nuri kamon makie saya, chisa gatana koshirae
Wakizashi
Sig. KANE (ika-kire KANENAGA)



拵全長 一尺六寸四分 柄長 四寸
Whole length: approx 49.7cm / Hilt length: approx. 12.1cm

刀身 美濃国 永禄頃 約四百六十年前
Sword: KANE (ika-kire Kanenaga)
Mino province / Eiroku era (mid 16th century, late Muromachi period) / about 460 years ago
刃長 一尺強 Edge length: approx. 30.4cm
反り 一分 Sori (Curvature): approx. 0.3cm
元幅 九分二厘強 Moto-haba (Width at Ha-machi): approx. 2.79cm
重ね 一分六厘半 Kasane (Thickness): approx. 0.5cm
金着一重ハバキ 白鞘付
Gold foil single Habaki, Shirasaya 

平成六年長崎県登録
保存刀剣鑑定書(兼永 時代室町末期)
Hozon certificate by NBTHK (Kanenaga, late Muromachi period)

 

 五ツ木瓜に水文字紋と十五枚笹紋を金梨子地塗に金切金と黒漆で散し配した鞘とし、同じ家紋の揃金具で装った、威儀正しい小さ刀拵。本金を用いた金梨子地塗は漆と融合して濃厚でしかも古調な色合いを呈しており、家紋は表面が平滑な金切金と石目地処理をした切金で調子の異なる美観を呈している。いずれも厚手の金を用いていることから剥落もなく健体を保っている。黒漆による家紋はわずかに透明感が生じて時の流れを感じさせ、両者の色合いを際立たせる梨子地塗であることが判る。金で縁取りを施した金具は奇麗に揃った赤銅魚子地仕立てに精巧な高彫が成されて洗練味がある。出鮫柄に据えられた目貫は、赤銅磨地に家紋と瓢箪を意匠したもので美しい。鐔は赤銅磨地無文ながら。耳にのみ金の色絵を施しており、金無垢切羽と共に腰に帯びた際の美観が考慮されている。
 附されている兼永の刀身は(注)、元来が一尺二寸ほどの操作性に優れた実用の武器。さらに二寸弱の磨り上げで腰に帯びた際のバランスを高めている。姿は先反りが付き、物打辺りの身幅が広く鯰尾風に張って武骨な印象。強く揺れる杢目と棟寄りに柾気を加味した板目鍛えの地鉄は、顕著な地景によって肌目が奇麗に起ち、全面に関映りが現れて凄みがある。浅い湾れから始まる互の目乱の刃文はくびれたような丸みを帯び、所々に尖刃、矢筈刃を交えて出入りに変化があり、帽子は地蔵風に乱れ込んで先小丸に返り、ごく浅く棟焼を施す。匂口潤みごころの焼刃も、具足の隙間からの攻撃や激しい打ち合いを想定したもので、戦場を経巡る武士の信頼に足る出来となっている。

注…茎尻に「兼」の銘字の一画目が遺されている。

平造脇差 銘 肥前國吉包 應於保宗秀需平造脇差 銘 肥前國吉包 應於保宗秀需

 

 

脇差 銘 兼(以下切 兼永) 切先表脇差 銘 兼(以下切 兼永) 刀身ハバキ上表


脇差 銘 兼(以下切 兼永) 切先裏脇差 銘 兼(以下切 兼永) 刀身ハバキ上差裏


脇差 銘 兼(以下切 兼永) ハバキ

 

兼永押形
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