青貝微塵変り塗鞘脇差拵
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脇差ほどの寸法の鞘に短刀を忍ばせる拵様式がある。抜刀の容易さと、相手を油断させる効果を求めたのであろう、しかも江戸後期の文化文政頃は芸術や文化の発展した時代背景があり、装飾性と実用の狭間で美観も工夫された。本作はこの典型。冴えた瑠璃色糸を平組みにして茶糸で唐花文を織り出した柄糸を用い、豊穣の象徴でもある稲束図目貫を巻き締めている。小柄も奇抜な枝梅を桶に活け込んだ早春の風景図。鐔は三日月を見上げる兎と周囲の気配に耳を聳たせる兎の愛らしい二羽を川辺に片切彫で彫り描いた作。縁頭、鐺の金具は四分一石目地仕立ての一作で、金小縁を廻らせているのが洒落ている。鯉口若葉が金粉塗とされた入念な仕立ての鞘は、微塵に塗り施した青貝が躍動的雲文の隙間から見え隠れするように、殊に真っ黒な漆を用いており、これによって透明感のある青貝が過ぎることなく視覚に働く構成となっている。この洗練された手法に注文主の愛着の程が偲ばれる。 |
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