脇差
銘　備州長舩則光
永享五年二月日
（良業物）

Wakizashi
Bishu Osafune NORIMITSU
Eikyo 5 nen 2 gatsubi
(Yoki Wazamono)

備前国　永享五年　五百八十六年前
Bizen province, Eikyo 5 (AD1433, early Muromachi period), 586 years ago

刃長 一尺五寸二分 Edge length; 46cm
反り 三分三厘 Sori (Curvature) approx.1cm
元幅 八分八厘強 Moto-haba(Width at Ha-machi); approx. 2.67cm
先幅 五分六厘 Saki-haba (Width at Kissaki); approx. 1.7cm
棟重ね 一分九厘
棟重ね 二分　Kasane (Thickness); approx. 0.61cm
彫刻 表裏 棒樋丸止 　Engraving： "Bo-hi, maru-dome" on the both sides
下蓋銀着上蓋金着二重ハバキ　白鞘付
Gold and silver foil double Habaki / Shirasaya

鮫皮研出鞘肥後脇差拵入　Samegawa togidashi saya, Higo wakizashi koshirae
拵全長 二尺一寸五分 Whole length: approx.65.2cm
柄長 四寸 Hilt length: approx.12.1cm

昭和三十六年東京都登録

拵 保存刀装鑑定書
刀身 特別保存刀剣鑑定書
Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK (Sword)
Hozon certificate by NBTHK (Koshirae)

　応永に続く備前鍛冶の中でも則光は、微塵に詰んだ柔らか味の感じられる極上質の板目鍛えに腰開き互の目を焼いて格別美しい刀を製作しながら、良業物に指定されているように殊に切れ味鋭く、戦国武将の信頼度が高い刀工であった。抜刀し易く片手で打ち振るに適した二尺前後の打刀が盛んに製作されたこの時代、本作のような一尺五寸を超える長めの脇差は高級武将の太刀の添え差しとして用いられたもので、地刃の精妙さも格別である。特筆すべきは応永備前に通じる奇麗な杢目を交えた板目鍛えの地鉄は微塵に詰んだ小板目肌が複合され、細かな地沸を分け入る地景で肌目が奇麗に起ち、映りが全面に現れ、焼頭から煙り込むような景色が加わるところ。刃文は腰開き互の目に小丁子が交じり、所々尖りごころに複雑な出入りを成し、乱れ込んだ帽子も先端が尖りごころに返ってここも応永備前風。匂口柔らか味のある焼刃は、刃境に匂のほつれが穏やかに掛かり、小丁子に伴う無数の足が匂の満ちた刃中に射す。わずかに反りの付いた茎に、鑢目も鮮明に銘字が鑽強く刻されている。