中筒火縄銃 無銘
江戸時代後期
全長 三尺三寸六分半
 銃身長 二尺三寸八分強
口径 五分三厘
三つ葉葵紋 鯉の滝登り図象嵌

平成十一年大阪府登録
八十五万円(消費税込)

Chu-zutsu Hinawa--ju
no sig

late Edo period
Whole length: 102cm
Barrel length: approx. 72.1cm
Caliber: approx. 1.61cm
inlaid "Mitsuba-Aoi" "Koi no takinobori" motifs


850,000JPY


 銃身に葵紋と鯉の滝登り図を象嵌した華やかな作ながら、寸法を控えめに操作性を高め、口径を大きくして威力を追求した中筒。火縄銃の性能の一つに破壊力がある。この銃から射出される弾丸の重量は六匁(二二・五グラム)、おおよそ五円玉六枚強に相当する。これを火薬の爆発力で発射させるためには、粘り強い素材からなる頑丈な銃身が不可欠。鉄炮鍛冶は鋼の性質を見極め、破裂の起こらない良質の鋼を合わせ鍛えたのであった。
本作の銃身は表一角と呼ばれる丸筒の上面を平にした珍しい形状で、先端の柑子は八角とし、表面に丸味を持たせる一方、最先端部には角張った八角縁を廻らしている。銃身表面には笹竹の生い茂る瀑布を遡上する鯉を銀の布目象嵌で大胆に、激流や笹竹は繊細な銀の平象嵌で表現している。加えて、滝より飛び散る水飛沫を意図したものであろう火鋏には通常ではまず見られない銀の点象嵌がふんだんに施されている。樹木の生い茂る美しい渓流から怒涛の如く流れ落ちる水飛沫を頬に感じるような清涼感溢れる中筒の逸品である。誇らしげに刻された三つ葉葵紋があることから、松平家有縁の上級武将が用いた城備えの中筒であろう。絡繰機構も健全である。

注…槊杖は先端が欠けて僅かながら短くなっている。



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