銘 肥前國住近江大掾藤原忠廣


Katana
Hizen no kuni ju Omi daijo Fujiwara no TADAHIRO



肥前国 慶安頃 約三百七十年前
Hizen province, Keian era (mid 17th century, early Edo period) about 370 years ago

刃長 二尺三寸三分強 Edge length; 70.6cm
反り 五分七厘 Sori (Curvature) approx.2.21cm
元幅 一寸四厘 Moto-haba(Width at Ha-machi); approx. 3.15cm
先幅 六分六厘 Saki-haba (Width at Kissaki); approx. 2cm
棟重ね 二分
棟重ね 二分二厘半 Kasane (Thickness); approx. 0.68cm
金着二重ハバキ 白鞘入
Gold foil double Habaki / Shirasaya

昭和二十六年神奈川県登録
特別保存刀剣鑑定書
Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK

 

 肥前刀の発展は初代忠吉による鎌倉時代の山城物の再現という大きな目標と、それに突き進んだ研究の結果によるが、師の技術を受け継いでさらに進化させた二代目忠廣の力量も忘れることができない。加え、忠吉家が仕えていた佐賀藩主鍋島家による刀工への厚い庇護が効果的に働いたものと思われる。殊に、同藩から他国の大名家などへ、忠吉、忠廣の刀が贈り物とされたほどに截断能力の高さと美しさが高く評価されている。また、寛永十一年に武器輸出禁止令が幕府より発せられているように、国外からの注文が多かったことも忠吉一門の技術の高さを示している。
 この刀は、元幅広くゆったりしたと腰反りが付き、鋒延びごころの力強い姿。わずかに鎬を張らせ、刃先鋭く、大業物の切れ味をさらに高める構造。良く詰んだ小板目肌鍛えの地鉄に縮緬状の揺れた肌を交え、全面に小沸が付いて地底の地景が穏やかに起ち、鎬寄りに小丁子状の映りが窺える。刃文は刃先近くまで延びた足を伴う焼の深い互の目丁子が連なり、帽子はわずかに掃き掛けを伴う小丸返り。刃縁に小沸を伴う匂口明るく冴えた焼刃は肥前の典型。小丁子の頭は穏やかに起伏が付き、太く細く、あるいは長短変化のある足が入り、小丁子の内側には葉が舞い、所々刃中に流れ込んだ小沸が島刃を成し、砂流し、淡い沸筋が掛かり、区上には金線が沸足を切って走る。
 忠廣は初代忠吉四十三歳のときの子で、待望の実子の誕生により、自らの技術のすべてを伝えるべく、幼い頃から鍛冶業に専念させたものであろう、若くしてすでに父に迫る覇気ある作品を生み出している。慶安頃は三十代後半の打ち盛り。直刃だけでなく、備前伝互の目丁子にも挑んで華やかな作品を遺している。

刀 銘 肥前國住近江大掾藤原忠廣刀 銘 肥前國住近江大掾藤原忠廣刀 銘 肥前國住近江大掾藤原忠廣 白鞘

刀 銘 肥前國住近江大掾藤原忠廣 切先表刀 銘 肥前國住近江大掾藤原忠廣 刀身中央表刀 銘 肥前國住近江大掾藤原忠廣 刀身ハバキ上表


刀 銘 肥前國住近江大掾藤原忠廣 切先裏刀 銘 肥前國住近江大掾藤原忠廣 中央裏刀 銘 肥前國住近江大掾藤原忠廣 刀身ハバキ上差裏

  刀 銘 肥前國住近江大掾藤原忠廣 ハバキ

 

忠廣押形
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