脇差
銘 (菊紋)越中守正俊(三代)

貞享五戌辰年六月吉日 忠家
Wakizashi
(Kiku mon) Ecchu no kami MASATOSHI (the third)
Jokyo 5 Tsuchinoe Tatsu no toshi 6 gatsu kichijitsu Tadaie



山城国 貞享五年 三百三十一年前
Yamashiro province, Jokyo 5, AD1688, 331 years ago

刃長一尺八寸八厘 Edge length; 54.8cm
反り 三分六厘 Sori (Curvature); approx.1.09cm
元幅 九分九厘 Moto-haba(Width at Ha-machi); approx. 3cm
先幅 七分七厘 Saki-haba (Width at Kissaki); approx. 2.33cm
棟重ね 二分一厘
鎬重ね 二分二厘 Kasane (Thickness); approx. 0.67cm
彫刻 表裏棒樋掻流し Engraving: "Bo-hi, Kaki-nagashi" on the both sides
上蓋赤銅下蓋金着二重ハバキ 白鞘入
Shakudo and Gold foil double Habaki / Shirasaya


平成七年大阪府登録
特別保存刀剣鑑定書(三代)
Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK (the third generation)

 越中守正俊は日本鍛冶宗匠伊賀守金道の末弟で、慶長から寛永頃の屈指の名工。この脇差は、その孫藤三郎正俊の作。父二代正俊譲りの菊紋を茎に刻し、政治、経済、文化が最高潮を迎えた寛文から元禄(注@)にかけて鎚を振るい、京の名匠正俊の名跡を全うしている。
三代正俊の貞享五年紀のこの脇差は、元先の身幅が広く中鋒に結び、鎬筋が張って重ね厚く、棒樋が掻かれて尚手持ちが重い量感のある造り込み。杢を交えた小板目鍛えの地鉄は、刃寄りに柾肌が現れて総体に詰み澄み、地景が入って奇麗に肌起ち、小粒の地沸が厚く付いて光を強く反射し、弾力味のある肌合いとなる。刃文は短い焼き出しから始まり、浅い湾れに抑揚のある尖りごころの互の目を配した構成。焼刃は刃縁が良く沸付き、刃境に金線、沸筋、砂流しが掛かって沸足淡く入り、刃中は細かな沸の粒子が充満して照度が抜群に高い。帽子も焼深く沸付き、浅く湾れてわずかに掃き掛け、先小丸に返る三品帽子。錆浅く保存に優れた茎は、栗尻の尖った独特の形、銘字、菊紋と、いずれも三代正俊の特色が顕著。忠家なる武士の需打であろうか、貞享五年(元禄元年)の戊辰の干支まで刻された入念作。祖父初代正俊が最も得意とした志津伝に挑んで見事成功を収めた三代正俊の優脇差(注A)である。

注@…『寒山刀剣講座第一巻』では作刀期間は寛文から元禄の「かなりの長期に及んだ」とある。
注A…神津伯著『新刀鍛冶綱領上巻』の延宝三年九月紀の刀は「…ハバキ元の刃約二寸斗り細く其上直刃に五の目刃交りとなる、刃縁細かに錵へ匂強し…」と記されており、本作と刃文構成が似ている。

脇差 銘 (菊紋)越中守正俊(三代) 貞享五戊辰年六月吉日 忠家脇差 銘 (菊紋)越中守正俊(三代) 貞享五戊辰年六月吉日 忠家脇差 銘 (菊紋)越中守正俊(三代) 貞享五戊辰年六月吉日 忠家 白鞘

脇差 銘 (菊紋)越中守正俊(三代) 貞享五戊辰年六月吉日 忠家 切先表脇差 銘 (菊紋)越中守正俊(三代) 貞享五戊辰年六月吉日 忠家 刀身中央表脇差 銘 (菊紋)越中守正俊(三代) 貞享五戊辰年六月吉日 忠家 刀身表ハバキ上



刀 銘 加州住陀羅尼橘勝國 切先裏脇差 銘 (菊紋)越中守正俊(三代) 貞享五戊辰年六月吉日 忠家 中央裏脇差 銘 (菊紋)越中守正俊(三代) 貞享五戊辰年六月吉日 忠家 刀身区上差裏

  脇差 銘 (菊紋)越中守正俊(三代) 貞享五戊辰年六月吉日 忠家 ハバキ

 

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