短刀
銘 玉心斎正蔭作

明治元年十一月日

Tanto
Gyokushinsai MASAKAGE saku
Meiji gan-nen 11 gatsubi



越後国 明治元年 百五十年前
Echigo province, Meiji 1, AD1869, 150 years ago

刃長 一尺一分二厘 Edge length; 30.7cm
反り 一分 Sori (Curvature): approx. 0.3cm
元幅 九分九厘 Moto-haba(Width at Ha-machi); approx. 3cm
重ね 二分六厘半 Kasane (Thickness); approx. 0.8cm
彫刻 表裏 腰樋・添樋掻流し
Engraving: "Koshi-hi, Soe-hi, kaki-nagashi" on the both sides
銀着一重ハバキ 白鞘付
Silver foil single Habaki / Shirasaya

黒石目地塗鞘短刀拵入 Kuro ishime-ji nuri saya, tanto koshirae
拵全長一尺五寸三分 Whole length: approx. 46.36cm
柄長 三寸四分 Hilt length: approx. 10.3cm

昭和四十七年新潟県登録
特別保存刀剣鑑定書
Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK

 玉心斎正蔭は五島鯉介と称し、源清麿の高弟鈴木正雄に相州伝を学び、また水心子正秀の孫正次には備前伝を学んでいる。製作は幕末動乱の時代ながら、廃刀令を迎えて鎚を置かざるを得ず、遺されている作品は極めて少ない。
 本作は、現代の分類では脇差だが、幕末から明治初期の実戦の時代は一尺をわずかに超えた寸延び短刀の様式。身幅広く重ね厚く、研ぎ減りなく刃区も深い健全体。刀身中程から棟の肉を削ぐことにより斬り込んだ刃の抜けを良くした必殺の武器に他ならず、具足の腰に備え、脇差としても短刀としても扱えるよう工夫したもの。小杢を交えた小板目鍛えの地鉄は良く詰み、微塵の地沸が付いて鉄色明るく、細かな地景が地底に働く極上質の肌合い。刃文は逆がかった小丁子乱で、帽子も調子を同じくして乱れ、先端に淡く星を焼いて返る。匂口柔らか味のある明るい焼刃は、刃縁に小沸が付いて所々湯走りが地に流れ込み、匂が満ちて透明感のある刃中には長短の匂足が盛んに入る。頑丈な造り込みで激しい打ち合いにも耐えるよう考慮されているが、現実には現在まで大切に伝えられてきたことが判る。古きを偲んだものであろう達磨形に目釘穴を開けた茎に仕立てている。

 附されている拵は、黒石目地塗の鞘に朧銀地高彫仕立ての濃密な波龍図揃金具で装い、波龍図小柄、割笄を備えとして黒漆仕上げの革巻き柄とした、奇麗な作である。

短刀 銘 玉心斎正蔭作 明治元年十一月日短刀 銘 玉心斎正蔭作 明治元年十一月日短刀 銘 玉心斎正蔭作 明治元年十一月日 白鞘黒石目地塗鞘短刀拵 刀身 短刀 銘 玉心斎正蔭作 明治元年十一月日

短刀 銘 玉心斎正蔭作 明治元年十一月日 切先表 短刀 銘 玉心斎正蔭作 明治元年十一月日 ハバキ上表


短刀 銘 玉心斎正蔭作 明治元年十一月日 切先裏 短刀 銘 玉心斎正蔭作 明治元年十一月日 刀身区上差裏

  短刀 銘 玉心斎正蔭作 明治元年十一月日 ハバキ

 

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