平造脇差
銘 於南紀重國造之
(良業物)


Hira-zukuri Wakizashi
Nanki ni oite SHIGEKUNI kore wo tsukuru
(Yoki Wazamono)



紀伊国 寛永頃 約三百八十年前
Kii province, Kan’ei era, early Edo period, early 17th century, about 380 years ago

刃長 一尺四寸四分五厘 Edge length 43.78cm
反り 一分六厘 Sori (Curvature); approx.0.49cm
元幅 一寸一分三厘 Moto-haba(Width at Ha-machi); approx. 3.42cm
重ね 二分五厘 Kasane (Thickness); approx. 0.76cm
金着二重ハバキ 白鞘入 上研磨
Gold foil double Habaki / Shirasaya

平成二十七年東京都登録
特別保存刀剣鑑定書
Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK

 重國は大和国手掻の出身。駿府で大御所徳川家康の側近くに仕え、越前康継、野田繁慶などと切磋琢磨し、家康没後はその十男頼宣に仕えて紀州和歌山城下に移った。沸出来の乱刃を焼いた相州伝、遠祖手掻包永を髣髴とさせる直刃出来の大和伝といずれも作位高く、殊に直刃は、鎌田魚妙が著書『新刀辨疑』で「縵(すぐ)理(やき)ハ海内の達人とも云べき者也」と絶賛した程の完成度を誇っている。
この平造脇差は真の棟が急角度に造り込まれ、身幅広く両区深く重ね厚く、元から先まで重ねの差が殆どなく、先幅も広くふくらが充分に付いて量感があり、反り控えめに、江戸初期特有の剛毅な風情を湛えた大平造。地鉄は板目に杢、綾杉風にうねる肌を交えて肌目起ち、地底に太い地景が脈々と入って力感漲り、地沸滾々と湧き立つ温潤味のある肌合い。直刃の刃文は、古名刀と同じく刃区を焼き込んで浅く揺れ、刃縁良く沸付いて明るく、刃境に湯走り、一部喰い違い、二重刃となり、細く長い金線が稲妻状に躍り、差裏の物打付近には太い金筋が沸を切り裂くように走り、良く沸付いた刃中には細かな砂流し掛かり、沸筋が流れ、焼刃構成は静穏ながら力強い。帽子も強く沸付き、掃き掛けて小丸に返る。茎の保存状態は良好で、太鑚の銘字と大きな目釘穴共々、重國の特色が顕著。父祖以来の持ち味である大和伝に相州伝の鍛えと焼が加味され、静穏で力感漲る重國の優質が如実に示された、同作脇差中の傑作となっている。

平造脇差 銘 於南紀重國造之平造脇差 銘 於南紀重國造之平造脇差 銘 於南紀重國造之 白鞘

平造脇差 銘 於南紀重國造之 切先表平造脇差 銘 於南紀重國造之 刀身中央表平造脇差 銘 於南紀重國造之 ハバキ上表


平造脇差 銘 於南紀重國造之 切先裏平造脇差 銘 於南紀重國造之 中央裏平造脇差 銘 於南紀重國造之 刀身区上差裏

  平造脇差 銘 於南紀重國造之 ハバキ

 

重國押形
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