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脇差
銘 於東大城下長運斎綱俊
天保八年正月日

Wakizashi
Todai joka ni oite Chounsai TUNATOSHI
Tenpo 8 nen Shogatubi



武蔵国 天保 四十歳作 百八十一年前
Musashi province, Tenpo 8, (AD1837), late Edo period, 181 years ago

刃長 一尺八寸六分一厘 Edge length; 56.4cm
反り 五分二厘強 Sori (Curvature); approx.1.58cm
元幅 一寸一分二厘 Moto-haba(Width at Ha-machi); approx. 3.4cm
先幅 八分九厘 Saki-haba (Width at Kissaki); approx. 2.7cm
棟重ね 一分九厘強
鎬重ね 二分六厘強 Kasane (Thickness); approx. 0.79cm
金着二重ハバキ 白鞘入
Gold foil double Habaki / Shirasaya

昭和二十六年岐阜県登録
特別保存刀剣鑑定書
Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK

 

 米沢藩上杉家の抱え工綱俊は寛政十年の生まれ。津田助廣の濤瀾乱刃写しの名手父加藤國秀、兄綱英に学んだ後、文化十三年に出府し、麻布飯倉の藩邸に鍛冶場を設けて作刀の拠点とした。備前一文字の丁子乱刃に挑戦し、山田浅右衛門、伊賀乗重などの試刀家(注@)と交流し、美しくしかも刃味の優れた刀を手掛けて新境地を拓いた。因みに天保元年頃、江戸に出た固山宗次と縁を結んで助言し、才能を開花させたのがこの綱俊であった。
 この脇差は東大城下(江戸)に於いての添銘が誇らしげに刻された綱俊不惑の年の精鍛作。身幅広く五分に反って鋒延び、棟側の贅肉が削ぎ落され、鎬筋が強く張って刃の通り抜けの良さを感じさせる威圧感充溢の体配。小板目鍛えの地鉄は微塵に詰んで澄みわたり、地底に細かな地景風の鉄が蠢いて緻密に肌起ち、初霜のような小粒の地沸厚く付いて晴れやかな鉄色。大波の打ち合う様を表現した濤瀾乱刃は、段々に連れた片男波乱刃に盛り上がった刃を交え、波飛沫を意図する沸粒の際立った玉焼が配された律動感のある構成で、銀の砂粒のような沸で刃縁明るく、沸足太く射し、細かな沸の粒子が充満して刃中は水色に澄む。帽子は僅かに掃き掛け、二重刃がかって小丸に返る。茎は化粧鑢の施された筋違鑢が丁寧に掛けられ、鑚の効いた銘字が入念に刻されている。師伝の濤瀾乱に新味が加えられて本歌助廣に迫り、名手綱俊の心技充実振りが発揮された、同作脇差中の傑出の作(注A)である。

注@…「山田五三郎両車 久保田経嘉頭 伊賀乗重両車快截断」との試銘入りの天保九年二月日紀の号雲井の刀がある(『新々刀大鑑』)。
注A…濤瀾乱刃の天保十二年二月紀の刀(第二十三回重要刀剣)がある。

脇差 銘 於東大城下長運斎綱俊 天保八年正月日脇差 銘 於東大城下長運斎綱俊 天保八年正月日脇差 銘 於東大城下長運斎綱俊 天保八年正月日 白鞘

脇差 銘 於東大城下長運斎綱俊 天保八年正月日 切先表脇差 銘 於東大城下長運斎綱俊 天保八年正月日 刀身中央表脇差 銘 於東大城下長運斎綱俊 天保八年正月日 ハバキ上表


脇差 銘 於東大城下長運斎綱俊 天保八年正月日 切先裏脇差 銘 於東大城下長運斎綱俊 天保八年正月日 中央裏脇差 銘 於東大城下長運斎綱俊 天保八年正月日 刀身区上差裏

脇差 銘 於東大城下長運斎綱俊 天保八年正月日 ハバキ

 

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