脇差
銘 得印家久作


Wakizashi
Tokuin IEHISA saku



美濃国 延宝頃 約三百四十年前

Mino province, Enpo era, early Edo period, late 17th century, about 340 years ago

刃長 一尺八寸 Edge length; 54.6cm
反り 五分 Sori (Curveture); approx.1.52cm
元幅 一寸六厘 Moto-haba(Width at Ha-machi); approx. 3.21cm
先幅 七分七厘 Saki-haba (Width at Kissaki); approx. 2.34cm
棟重ね 二分五厘
鎬重ね 二分六厘 Kasane (Thickness); approx. 0.79cm
彫刻 表 行剣巻龍 裏 行珠追龍図
Engraving: "Gyo no Ken-maki Ryu" on the right face, "Gyo no Tama-oi Ryu" on the back face
金色絵一重ハバキ 白鞘入 Gold iroe single Habaki / Shirasaya

昭和五十四年東京都登録

保存刀剣鑑定書
Hozon certificate by NBTHK


 得印家久は江戸前期の美濃刀工で、名を古市喜兵衛尉という。戦国動乱期に磨かれた作刀技術を継承して美濃で鎚を振るい、萬治三年八月、春日大明神への奉納薙刀を精鍛。天和三年九月四十八歳(注@)の時には、かの有名な直江兼続も信仰したと伝える京都愛宕山大権現への奉納刀を精鍛。その茎には「百箇日精進潔斎修神道加持秘密鍛煉作之」とあり、優れた技術と篤実な人柄を偲ばせている。
この脇差は身幅広く重ね厚く、五分に反って中鋒の骨太な造り込み。地鉄は小杢目肌が詰み、地底に細かな地景が蠢いて肌目緻密に起ち、清浄な霜のような地沸が厚く付いて鉄色晴々としている。透けるが如きこの美肌には、剣巻龍と宝珠を追って天空から舞い降りた這龍が、軽やかでしかも的確な鑚使いからなる線描で、地鉄の底から浮かび上がったように彫り表されている。互の目乱の刃文は、尖りごころの刃、矢筈風の刃を交えて高低に変化し、殊に物打辺りは地に深く突き入る刃が焼かれ、淡雪のような小沸が付いて刃縁明るく、匂充満して明るい刃中には匂足が射し、刃境に細かな金線、砂流し掛かって僅かに沸筋が流れる。帽子は乱れ込み、突き上げごころに小丸、長めに返る。茎の保存状態は良好で、美濃特有の鷹ノ羽鑢が掛けられ、たっぷりと墨を含ませて書いたような雄渾な書体の太鑚の銘字が鮮やか。関七流の一つ得印(注A)の派名が冠された優脇差である。

注@…『美濃刀大鑑』参照。尚、銘文から生年は寛永十三年とわかる。
注A…他に善定・三阿弥・奈良・徳永・良賢・室屋があるが、得印を明にする例は稀である。

脇差 銘 得印家久作脇差 銘 得印家久作脇差 銘 得印家久作 白鞘

脇差 銘 得印家久作 切先表脇差 銘 得印家久作 刀身中央表脇差 銘 得印家久作 ハバキ上表


脇差 銘 得印家久作 切先裏脇差 銘 得印家久作 中央裏脇差 銘 得印家久作 刀身区上差裏

脇差 銘 得印家久作  ハバキ


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