脇差
銘 近江大掾藤原忠廣
(大業物)


Wakizashi
Omi daijo Fujiwara no TADAHIRO
(O Wazamono)



肥前国 寛文頃 約三百五十年前

Hizen province, Kanbun era, early Edo period, late 17th century, about 350 years ago

刃長 一尺七寸四分五厘 Edge length; 52.8cm
反り 一分三厘 Sori (Curveture); approx.0.4cm
元幅 九分九厘 Moto-haba(Width at Ha-machi); approx. 3cm
先幅 七分五厘 Saki-haba (Width at Kissaki); approx. 2.28cm
棟重ね 一分八厘
鎬重ね 二分一厘 Kasane (Thickness); approx. 0.64cm
銀地金着一重ハバキ 白鞘入 Gold foil single Habaki (made of silver) / Shirasaya

平成十六年埼玉県登録
特別保存刀剣鑑定書
Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK 

価格 900,000 円(消費税込)

 江戸時代前期の肥前を代表する名工近江大掾忠廣の、常にない変化に富んだ乱れ出来の一口。忠廣は山城国来派などを手本に、緻密に詰んだ小板目肌鍛えの地鉄に直刃を焼くを得意として作刀に励み、主鍋島家の繁栄に貢献した偉大な人物。天和二年六十九歳の時、忠廣は藩主世子綱茂より古にも新作にもない珍しい刃採りからなる刀の製作を命じられ、奇抜に堕すことのない表裏が直刃と乱刃の所謂「児手柏(注@)」を焼き、改めて忠吉家当主の面目を保つとともに信頼を厚くしたという(注A)。
 この脇差は、寸法を長めに先幅もやや広く反りを極力抑えた造り込み。重ねしっかりとして刃区が深く残された健全体。小杢を交えて均質に詰む小板目鍛えの地鉄は、肌目に沿って入り組む地景によって流動的な縮緬状に穏やかに起ち、さらに肌目に沿って細やかな地沸が付いてしっとりとした極上の肥前肌となる。区下の焼き込みから始まる互の目乱の刃文は、一文字を想わせる地に深く突き入った蛙子風の逆がかる互の目、雁股刃、尖刃が複雑に交じって高低抑揚変化し、帽子は端正な小丸に返る。匂口明るく冴えて柔らか味のある焼刃は、刃境に小沸が付く特徴も顕著で、物打辺りは刃境を砂流しが流れ掛かる。盛んに射す足は太く淡く刃先に広がり、刃中を流れる淡い匂によって飛足状に連なる。焼頭から地中に射し込む足状の働きも、淡い飛焼に変じて地鉄の景色となっている。美しい直刃で知られる忠廣だが、本作のような備前伝にも深く通じていたことを示す優品である。

注@…手掻包永の磨り上げ刀。「兵部大輔藤孝磨上之異名号児手柏 天正二年三月十三日」と銘があり、細川幽斎藤孝が仕立て直したことが知られている。
注A…『肥前の刀と鐔』。

脇差 銘 近江大掾藤原忠廣脇差 銘 近江大掾藤原忠廣脇差 銘 近江大掾藤原忠廣 白鞘

脇差 銘 近江大掾藤原忠廣 切先表脇差 銘 近江大掾藤原忠廣 刀身中央表脇差 銘 近江大掾藤原忠廣 ハバキ上表


脇差 銘 近江大掾藤原忠廣 切先裏脇差 銘 近江大掾藤原忠廣 中央裏脇差 銘 近江大掾藤原忠廣 刀身区上差裏

脇差 銘 近江大掾藤原忠廣 ハバキ


忠廣押形
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