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おそらく造短刀 銘 平安城住藤原刻国 (業物)

Osorakuzukuri Tanto Heianjo ju Fujiwara Tokikuni
(wazamono)


山城国-因幡国 寛永頃 約三百八十五年前 刃長 九寸五分三厘(二八・九糎) 反り 二分 元幅 一寸三厘
先幅 一寸三厘 棟重ね 二分五厘 鎬重ね 二分三厘
彫刻 表 瑞雲・梵字 裏 薙刀樋・添樋
銀着二重ハバキ 白鞘入
『鑑刀随録』『日本刀工辞典新刀篇』所載
昭和二十六年大阪府登録

特別保存刀剣鑑定書(初代信濃大掾忠国初銘)

 刻国は名を山本八郎太夫といい、堀川國廣の高弟出羽大掾國路の門人。大坂夏の陣の記憶も新しい戦国気風の残る寛永年間、武備充実と士風引締めを図った因州池田侯に乞われて鳥取城下に鍛冶場を移し、寛永九年二月迄に忠国と改銘し、寛永十一年には信濃大掾を受領している。刻国と銘した期間が短いことから同銘作は少なく、資料的な価値が頗る高い(注@)。
 この短刀は現存稀有の刻国銘の一振で、身幅広く重ね厚く、差表の腰元に梵字を、裏には樋を掻き、鎬を高く棟の肉を削ぎ落とすことにより截断能力を高め、刀身の中程に横手を設けてふくらの曲線が美しく映える、信玄公が好んだおそらく造(注A)。地鉄は鎬地に柾目肌が強く流れ、板目鍛えの平地は細かな地沸が付いて縮緬状にざんぐりと肌立ち、全面に映りが起つ。師國路同様に刃区下の焼き込みから始まる丁子と互の目の刃文は一部が地中に深く突き入り、平地に焼が飛んで玉となり、横手から上身も同調子に帽子はやや突き上げて小丸に形よく返る。匂主調の焼刃は、刃境に金線と砂流しが掛かり、沸匂が充満して照度が高い刃中には沸筋が流れる。國路と同じく栗尻の丸い茎には筋違鑢が掛けられて錆味優れ、太鑚で入念に刻された銘字が「平安城住藤原」「刻国」と表裏に切り分けられている(注B)事も興味深い。短躯ながら覇気漲る優品である。

注@…『日本刀銘鑑』では寛永六年から九年にかけて刻国と銘したことが記されている。
注A…信玄が所持した後、片桐且元の指料となったと伝える助宗作のおそらく造短刀が有名。
注B…藤代松雄氏は『日本刀工辞典新刀篇』で「一ツの新趣向」と記している。江戸初期に間々みられる特徴。

おそらく造短刀 銘 平安城住藤原刻国 表おそらく造短刀 銘 平安城住藤原刻国 裏おそらく造短刀 銘 平安城住藤原刻国 白鞘

おそらく造短刀 銘 平安城住藤原刻国 切先主tおそらく造短刀 銘 平安城住藤原刻国 刀身 ハバキ上表


おそらく造短刀 銘 平安城住藤原刻国 切先裏 おそらく造短刀 銘 平安城住藤原刻国 刀身ハバキ上裏

おそらく造短刀 銘 平安城住藤原刻国 ハバキ


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