《坂本龍馬ら志士の腰間にも見られるスタイル》
幕末の武士が腰に差したであろう合口短刀拵。有名な坂本龍馬のポートレートを始めとし、幕末の志士が同タイプの拵を懐に差している写真が現在にも多く遺されている。
『レンズが撮らえた幕末維新の志士たち』
小沢健志監修 山川出版社 より
《朧銀地でまとめられたシックな金具類と塗の妙味を堪能出来る柄鞘》
色合い深く落ち着いた朱漆塗鞘の表に四つ、裏に三つ蒔絵された文様は、氷割文様か、はたまた網、竹籠、或いは蜘蛛の巣…と想像が広がる。
柄は立鼓(りゅうご)が取られて形よく、中央に朧銀石目地の筒金を挟み一分刻みとされた黒漆塗の柄は艶やかな光沢を放っている。目釘金具は筒金と合わせて朧銀地。こちらは磨地に仕 立て、巧みな毛彫と片切彫で老松を描いている。
栗形は朧銀磨地に情緒たっぷりの蛍狩りの図が彩り豊かな高彫色絵で描いている。団扇が附された枝の先には暗闇に妖艶な光を発する蛍が舞い飛び、今日あまり見られなくなったノスタルジックな情感を喚起させる。笹は節、葉脈までが彫られ、金色が鮮やか。五本骨の団扇の図柄は花菖蒲であろうか。
縁・頭。鞘口・鐺の角が拵全体を引き締めている。