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腰刻黒茶笛巻塗鞘脇差拵(尾張拵)


Koshi kizami Kuro cha fuemaki nuri saya
wakizashikosiare
(Owari koshirae)

ご成約を賜りました Sold out


― 拵に息づく柳生兵庫・連也斎の哲学


日本刀販売品 平造脇差 銘 武蔵國住邦松作 平成二年八月
平造脇差 銘 武蔵國住邦松作 平成二年八月


拵全長 一尺九寸四分七厘 (Whole length; 59cm)  / 柄長 四寸三分八厘強(Hilt length; 13.3cm)
刃長 約一尺二寸一厘 (Edge length; approx. 36.4cm) / 反り 約二分六厘 (Curveture; approx.2.8cm)
元幅 約九分二厘 (Width at Ha-machi; approx. 2.8cm)
棟重ね 約一分八厘 / 鎬重ね 約二分二厘 (Thickness; approx. 0.68cm)
白鮫皮着黒糸巻柄 Hilt; covered with white shark skin, tied black string
一疋獅子図目貫 容彫金色絵
 Menuki; "Shishi" , Gold iroe
社前人物(芸能)図縁頭 朧銀磨地高彫色絵
Fuchigashira; "Kadotsuke Geinoh"(entertainer), made of Oboro-gin
獅子牡丹図小柄 赤銅魚子地高彫色絵
Kozuka; "Shishi Botan" , made of Shakudo
葵唐草文図鐔 無銘 鉄槌目地撫角形銀布目象嵌地透赤銅埋
Tsuba; "Aoi, Karakusa" , made of iron

刀身はございません。This Koshirae has no sword.


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 尾張藩は草創期に柳生兵庫・連也斎を剣術兵法指南役に招き、藩士の尚武の気風も強かった。柳生の剣の真髄は素早い抜き打ち―。脇差にも重きが置かれ、拵にはそのお国ぶりが顕著に見られる。

《電光石火で相手を討つ》

 この脇差拵は瀟洒でありながらも、咄嗟の抜き打ちへの配慮が随所に見られる典型的な尾張拵。
若葉は広く取られ、
鞘の腰は刻みとなっており滑り止めの役割を果たしている。
撫角形の栗形は鞘口から指三本の位置にあり鞘を握るだけで鯉口を切ることが出来、これらの工夫が電光石火の抜刀を可能としている。
立鼓が取られて柄尻に向かって細く作られた柄には転がりにくい角形の小ぶりの鐔が掛けられている。
柄に巻かれた白鮫皮の親粒は大きく柄巻の結び目は高く起ち、ここに小指を掛けて柄を握れば、少し離れた敵への攻撃も可能。


握り部分



収められた脇差はつなぎの形状から冠落造で、鎬筋高く、棟の肉が削がれて反り浅く付き、精悍鋭利な造り込みで、いかにも尾張武士好み。

 

《美しい漆の色合いと拵を装う小道具》
鞘の黒漆は時代を経てやや透け、朱を帯びた美しい色合いを呈している。
朧銀の縁頭は社前の人物をモチーフとした面白い画題。縁には老松生い茂る鳥居が、そして尾張拵独特の縁に対してやや小さめの頭には社前で慶事を寿いだ芸能民の様子であろうか、日出図朱扇に烏帽子姿の人物が描かれている。拵から察するとお国の三河万歳かもしれない。いずれにしてもいかにも楽し気な様子が伝わってくる。

 

平造脇差 銘 武蔵國住邦松作 平成二年八月 差表切先



平造脇差 銘 武蔵國住邦松作 平成二年八月 差表中央

平造脇差 銘 武蔵國住邦松作 平成二年八月 差表区上

平造脇差 銘 武蔵國住邦松作 平成二年八月 差裏切先

平造脇差 銘 武蔵國住邦松作 平成二年八月 差裏中央

厚みがあり塗られていない若葉も尾張拵の特徴。