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短刀 無銘 新々刀海部


Tanto
no sign; KAIFU (Shin-shintoh)


保存刀剣鑑定書新々刀海部
Hozon certificate
(
Kaifu, Shin-shintoh)

ご成約を賜りました Sold out


― 新々刀期に甦る古名刀へのルネサンス

日本刀販売品 脇差 銘 土肥真了

阿波国 天保頃 約百八十年前 Awa province / Tenpo era (late Edo period), about 180 years ago
刃長 六寸三分 (Edge length; 19.1cm)  / 内反り僅少 (a little curved go to inner, Uchi-zori)
元幅 六分(width at Ha-machi; 1.8cm) / 棟重ね 一分七厘 (thickness; 0.54cm)

金着一重ハバキ 白鞘入 Gold foil single Habaki, Shirasaya
昭和36年宮城県登録(13699号 10月23日)


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《水心子正秀の唱えた復古刀理論を体現した一振り》

 八代将軍吉宗の改革は家康を範としており、要は士風刷新。そのため吉宗は諸大名に刀工の作を提出させて審査、筑前重包、薩州正清、同安代の作を表彰。その後の寛政の改革、天保の改革、いずれも復古的であったが、こうした機運を受けて、刀剣界に現れたのが水心子正秀である。水心子正秀は、近くは新刀期の越前守助廣や井上真改を、遠くは鎌倉時代の古名刀を範に精力的に槌を振るった。
 江戸後期の阿波国海部(注)として極められたこの短刀も、こうした復古理論を受け鍛造された一振り。

僅かに内に反りふくら枯れごころとなる鎌倉後期の名短刀を想わせる上品な姿。

(注)阿波国那賀郡海部。代表工には氏吉(うじよし)がいる。


《巧みな鉄の鍛えが生み出す地鉄の妙味》

硬度の異なる鉄を配合して鍛えられた
地鉄は、板目肌の所々に流れごころの肌を交え、黒い地景も躍動、同時代他工の作とは異なって肌目が起つも、小粒の地沸が滾々と湧き立って地肌は潤う。


《新古の名人の手技を見るような刃文の特質》

直刃に小沸が付き、刃縁明るく輝く刃文は、刃縁の沸を切り裂くように細く長い金筋が煌く。
刃区上が僅かに潤みごころとなるのは水心子を想わせる。突き上げごころに小丸に返る帽子は、来國俊の富士山型の帽子の如し

短刀 無銘 新々刀海部
短刀 無銘 新々刀海部


潤い感ある地刃の働きは見応え充分。巧みな研磨により、肌目が必要以上に立つのが抑えられ、しっとりとした仕上がりである。


茎は無銘ながら生ぶで、棟を丸く仕立て、化粧付く筋違鑢が丁寧に掛けられている辺りも水心子流。