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脇差

生ぶ茎無銘 末関


Wakizashi
no sign (Ubu-nakago) Sue-zeki



美濃国 室町時代後期 永正頃 約五百年前
Mino province, late Muromachi period, about 500 years ago (Eisho era)

刃長 (hacho)

一尺七寸九分八厘
(54.5cm)

反り (sori)
五分五厘
(1.66cm)
元幅 (motohaba)
一寸(3.06cm)
先幅 (sakihaba)
六分六厘(2.0cm)
棟重ね
(Mune-gasane)
二分一厘(0.66cm)
鎬重ね
(Shinogi-gasane)
二分二厘(0.67cm)

市松模様に唐草図素銅一重ハバキ
fitted with Suaka single Habaki, engraving "checks, arabesque"pattern
白鞘入
come in a magnolia scabbard

昭和31年福岡県登録(4月12日 26509号)

保存刀剣鑑定書
末関
certificate NBTHK (Hozon, attributed to Sue-zeki )


― 後世の大小刀の脇差の原型ともいえる、接近戦に特化した「刀」 ―

 室町時代後期、武士は一尺六、七寸から二尺を僅かに切る長さの刀を長い刀や太刀に差し添えて、これを接近戦や咄嗟の防御の際に素早く抜いて用いた。江戸時代の大小刀の観点からすると、本作は脇差ということになるが、戦国時代には「刀」として認識されていたのである。

《特徴 その1 優れた操作性と高い切断能力を示す体配》

短い茎は掌にすっぽりと収まり、片手で扱うに十分な寸法である。高く張った鎬筋は肉を裂き骨を断ち切るために最適な形状であり、切断能力の高さを示している。そして先反りの付いた体配は、刀身を「当てた」後に「引き切る」という力学的な合理性に適っている。
そもそも関物は数ある日本刀の中でも「切れ味」の代名詞的ブランドである。『古今鍛冶備考』によると最上大業物に指定された刀工は僅か十三工(のちに一名加えられ十四工)。そのうち室町期の刀工は僅か四名。その中の三名が実に関の刀工なのである。(初代・二代兼元、和泉守兼定)。

《特徴 その2 変化に富んだ地中の働きと孫六兼元を想わせる刃文構成》
地鉄は鎬地・平地に亘り全面に同一の鍛えがされ、板目に杢目を交えて肌強く立ち、粒だった地沸付き、白け映り立つ。

刃文は孫六兼元を彷彿とさせる尖りごころの互の目乱刃で、刃境に湯走り、金線・砂流し激しくかかり、足長く射す。帽子は焼を深く残し、乱れ込み金線強くかかり、激しく掃き掛けて返る。

軽快さと強さを兼ね備えた、戦国気質を今に伝える良品である。

 

脇差 生ぶ茎無銘 末関
脇差 生ぶ茎無銘 末関

脇差 生ぶ茎無銘 末関 差表区上
脇差 生ぶ茎無銘 末関 差表中央板目肌の中に所々に杢目肌が見える。画像では認識出来ないが、中央、物打付近には映りが立っている。

脇差 生ぶ茎無銘 末関 差表鋒


脇差 生ぶ茎無銘 末関 差裏区上

脇差 生ぶ茎無銘 末関 差裏中央
孫六兼元を想わせる二本、三本と連れた互の目乱れ刃。刃中には金線・砂流しが激しく掛かる。
脇差 生ぶ茎無銘 末関 差裏 鋒
茎の鑢目も美濃国特有の鷹ノ羽鑢が掛けられている。
短い茎は片手で扱いやすく、操作性に優れている。


脇差 生ぶ茎無銘 末関 ハバキ