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短刀 無銘 宇多

Tanto
no sign UDA

ご成約を賜りました Sold out

保存刀剣鑑定書宇多
Hozon certificate(Uda)


 ― 左文字を範に鍛えられた意欲作

短刀 無銘 宇多

短刀 無銘 宇多


越中国 天文頃 約470年前  Ecchu province Tenbun era (late Muromachi period, mid 16th century), about 470 years ago

刃長 六寸 (Edge length; 18.2cm) / 無反り (no curveture)
元幅 七分二厘 (width at Ha-machi; 2.2cm) / 重ね 一分八厘 (0.55cm)
金着一重ハバキ 白鞘入 Gold foil single Habaki, Shirasaya
平成26年東京都登録(312334号 9月9日)

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《秀吉・家康ら錚々たる武人をも魅了した名工左文字を意識した良作》

 鎌倉後期の筑前の刀工左文字(さもんじ)は鎌倉の正宗門人と伝える名工。秀吉、家康ら天下人も鮮やかな地刃の冴えに魅せられていた。諸大名や旗本の家系図『寛政重修諸家譜』を見ると、慶賀、家督相続、参勤交代の折々に将軍家へ献上された刀剣の中にも「左」の文字が散見される。 そしてこの名刀の代名詞「左文字」写しに挑んだ優工(注)もまた古来少なくない。
 この短刀も名刀「左文字」を強く意識して鍛えられた宇多極めの良作である。


《巧みに再現された「捌帽子」》

 乱れ込んで尖って返る―。 
捌帽子」(さばきぼうし)の呼称で知られる左文字の帽子が実に巧みに再現されている。


《所々に見られる古作への強い意識性》
 

 身幅控えめながら重ね頗る厚く、ふくら枯れた鋭利な鎧通しと呼ばれる刀姿は、室町後期の短刀に多く見られるスタイルである。
一方、 真に造り込まれた棟などには明確な古作への意識性が見て取れる。六寸と短寸であることも、左文字への意識が感じ取れる。

《変幻自在な沸の美》 

 地鉄は板目肌に流れごころの柾を交えて強く肌立つ。粒だった地沸ついて沸映りごころに白く映りが立つ。
刃文は湾れ、刃縁は強く沸づいて雪のむら消えの如き態を示し、宇多の特色顕著。刃境に湯走り、金線、砂流しかかり処々に二重刃となり、差裏物打付近、大きく食い違い奔放にして大胆な焼刃構成。



(注)源清麿も左文字に心酔していた一人であった。左文字写しの弘化年紀の短刀がある(弊社蔵)。

短刀 無銘 宇多
短刀 無銘 宇多


左文字の代名詞と言える「捌帽子」が巧みに再現されている。





ハバキ、白鞘も良質のものが附されている。