海軍将官が腰に帯びた藍鮫皮包の短剣拵。桜花図の金具は細部までしっかり造られ、粒揃いの白鮫皮を巻き締める金線と、いずれも金色鮮やか。明治期の様式の入念作で、縁・切羽・鐔には、附帯する短刀の茎の「廿三」の切付銘と同じ数字が識別のために毛彫されている。
収められた短刀も鍛錬された作。内反り極僅かについた端正な姿で、小板目鍛えの地鉄には直刃の刃文が焼かれ、茎は無銘ながら生ぶ茎。作者は幕末から明治にかけての膳所胤吉、或いはその流れを汲む堀井俊秀あたりであろうか。通常みる官製の短刀とは異なり、本職の刀工が精鍛した一振。軍艦に乗り込む海の武人の姿を偲ばせるに充分である。