紅葉鹿図鐔
無銘 正阿弥
鉄槌目地丸形毛彫高彫象嵌色絵 赤銅覆輪
縦 81.3mm 横 80.5mm 切羽台厚さ 4.5mm
(耳 3.1mm)
奥山に 紅葉踏みわけ鳴く鹿の
声きく時ぞ 秋は悲しき
(猿丸太夫 古今和歌集)
紅葉がはらはらと舞い落ちる秋野に現れた一頭の鹿。牝鹿を求めて啼く声は木霊しながら山の奥深くに吸い込まれてゆく...。
秋のメランコリーを紅葉の美しさと鹿の啼く声で表現した小倉百人一首にも収録された名歌を想起させる鐔。
表には鐔をぐるりと囲むような古木に、色彩豊かな紅葉と、空の彼方に向かって呼びかけるような鹿の姿が、赤銅、素銅、朧銀、そして金と彩り豊かな象嵌で描かれている。
裏面は地鉄にしっくりととけこむような渋い色合いの紅葉に流水が取り合わせられ、表の華やかさとは趣を変えた余韻と情緒が感じられる。