雁行に山水図鐔
銘 崎陽山人若芝
若芝(じゃくし)は肥前国長崎の鐔工。初代は喜佐衛門といい、肥前国佐賀の出身で竜造寺家の武士の出。長崎に出て禅僧として修業し、そこで絵を学ぶ。北宋画風の山水図を得意とし、それは作鐔にも反映され、以後作風は代々伝承されていく。
この鐔も若芝が得意とした山水図。水辺に舟を浮かべ漁りに勤しむ人物、岸辺の四阿、急峻な断崖―。水面は遥か遠景までさざ波を讃えながら広がりを見せ、水平線と混然一体となる。裏に目をやると、風にたなびく柳の枝と秋の空から飛来してくる雁の群れを眺める一人の高士。描かれている情景は正しく理想郷である。
銘は流麗な草書体に切るのが特徴。