日本刀販売専門店 銀座長州屋

鉄錆地三十二間筋兜 顰前立

江戸時代 

 謹直で簡潔、美しい筋立てが印象的な、わずかに後勝山形とされた三十二間筋兜。曲面をふっくらと打ち出した鍛え強い鉄板を前正中より後正中へ向けて整然と接ぎ合わせている。後正中の上部に総角の環を設け、天辺の座は菊座に二重の裏菊座、小刻座、透かし菊の抱花、玉縁を重ねた六段重ねとしている。眉庇は共鉄製で、金の色絵を施した三星鋲が燦然と輝き、吹き返しと共に唐草の筋彫りに金色絵を施した豪華な覆輪を廻らしている。吹き返しには小笠原家の紋所として知られる三階菱を金粉で描き入れ、綴は鉄板物切付小札五段の紺糸縅。前立は鉄打出の顰前立。鍛鉄を打ち出した際の鎚目が鮮明に現れた入念作。鉢と前立共々良質の鍛鉄を用いて製作されたもので、黒光りする錆色の美しさと、控えめに配された金色の対比に武家の格式が感じられる奥床しい兜である。

(『銀座情報12号』 掲載品)